大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(ネ)2153号 判決

控訴人が昭和三十五年九月十一日有限会社安野工務店と本件建物の建築につき請負契約(内容については争がある)を締結し、同日金四十万円を右工務店に支払い、同工務店がその頃から工事に着手したことは当事者間に争がない。証拠によれば、右請負契約は、工期は昭和三十五年十一月末日までとし、請負人は同日本件建物を完成して控訴人に引渡すこと、工事代金の総額を金二百八十五万円とし内金四十万円を契約と同時に支払い、残額は請負人において本件建物を他に貸し付けその権利金、敷金、賃料をもつてその支払に充てることであることを認めることができる。控訴人は「材料の相当多量の部分が古い建物の取り毀し材料であるので、本件建物の所有権は、請負人が各種材料を搬入して建築するごとに控訴人に帰属する約定である」と主張し、前記控訴人の本人尋問の結果中には、これに副う供述があるが、証拠によれば、控訴人は六坪六合のバラツク建二戸を取り壊し、その跡に本件建物の建築を企てたものであり、使用しうる右建物の古材は僅であり、新しい材木代が金七十七万円余であつて、材木の大部分は請負人の供給するものであること、請負契約において引渡期日を工事完了後各契約事項完了と同時と定めていることが明らかであり、これらの事実及び前記証人安野文吉の証言と対比して考えると、前記供述は信用し難く、証拠によれば、前認定の如く請負人は金四十万円の支払を受けるのみでその余の請負代金は本件建物を賃貸して得る権利金、敷金、賃料をもつて充てる約束であるが、現実に入金しない限り請負人の請負代金に対する不安は消滅しないので、かような約束があるからと言つて、請負代金完済の場合と同様に本件建物の所有権を予め控訴人に帰属せしめる事情とは考えられない。他に控訴人の右主張を認めるに足る証拠がない。然らば、本件建物は完成して控訴人に引渡すまでは、請負人である前記安野工務店の所有に属するものとなすべきで、この点の控訴人の主張は理由がない。

(千種 脇屋 太田)

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